今住んでいる家屋の老朽化により、建替え工事を検討しているという方。建替えには「解体工事」と「新築工事」の2種類が存在しているのですが、それらを担当する業者を「ひとつにまとめる」こともできるし、「分けて依頼する」こともできることをご存知でしたか?
この「分けて依頼する」ことを分離発注といい、実はメリットを多く持ったやり方であることを知らない方も多いでしょう。
今回はこの「建替え工事における分離発注とは何か、どんないいことがあるのか」という点について見ていきましょう。
建替え工事で覚えておくべきこと
建替え工事に発生する2つの工事とは
建替え工事とは、今住んでいる家屋を取り壊して更地にし、新たな家屋を建築する工事のことです。
つまり、ここには2つの工事が存在することになるのがおわかりでしょうか。
最初に「旧家屋を取り壊す解体工事」、その後に「新居を建築する新築工事」という2つです。
この2つの工事は、発注する側からしたら違いがよくわからないかもしれませんが、「解体」と「新築」で全く違う側面を持つ工事です。だから本来であれば「それぞれを違う業者が担当する」のは当然のことだと気づくはずです。
一括発注と分離発注
しかし、たいていの場合この「解体工事」と「新築工事」の両方を、新築工事を担当するハウスメーカーや工務店にまとめて依頼します。これが「一括発注」です。知らなければこれが普通の流れだと思って、当たり前のように行うことが多いでしょう。
対して、一括で2つの工事を発注せず、「解体工事」の部分だけを外部の解体工事専門業者に依頼することを「分離発注」といいます。
この場合、「外部の解体工事専門業者」は施主自らが探すことになるため、一見面倒だなと思われることでしょう。たしかに一括発注であればすべてを一社にまかせることができるので、それ以上の手間がかからず、楽です。しかしこの分離発注には、メリットがたくさんあるのです。
次項では、分離発注についてもう少し掘り下げて見てみましょう。
分離発注のいいところ
解体工事にかかる費用を安く抑えられる
解体工事から新築工事までを一貫してハウスメーカーなどに依頼した場合、メーカーは解体工事が専門ではないため、その部分のみを下請け企業や懇意にしている会社などに依頼することになります。
そうすると、そこに発生するのが仲介手数料です。一括発注の場合、施主は知らず知らずのうちにこの仲介手数料も支払っているのです。
一方で分離発注の場合は、自分で解体業者を探すため、この仲介手数料を払う必要がありません。金額にしたら数十万~数百万円抑えることが可能な場合もあるのです。
規模の大きな2つの工事がある住宅の建替えにおいて、かかる費用も相当なものです。そこでこれだけの金額を節約できるということは、大きいですよね。
質の高い解体工事を期待できる
施主みずからが解体業者を選定し、現場での打合せをし、直接すべてのやりとりをするということで、行き違いや話が嚙み合わないといった事態を未然に防げる可能性が高くなります。
また、間に別の業者が入らないことで意思の疎通もしやすくなり、施主の希望がよく通ることにもなるでしょう。風通しが良いと、何かトラブルが起きた際の解決もはかりやすくなりますね。
分離発注にはメリットもデメリットもある
このように分離発注には、経費節減と質の高い工事の実現という、大きなメリットがあります。その分施主の手間や時間の負担が大きいという点がデメリットではありますが、メリットとデメリットは裏表の存在。何を重視するかで、同じ事象も良い面と悪い面が浮き出します。
分離発注のメリットに大きな魅力を感じられるのであれば、ぜひその方向で動いてみるといいですね。
分離発注の流れ
分離発注を行う場合は、ハウスメーカーなどに一括で発注しないため、解体工事を依頼する業者は改めて自分で探す必要があります。信頼できる会社を見極める目も必要であるため、経費を抑えられる分多少ハードルが高く感じられることもあるでしょうが、流れを確認しながらひとつずつ手順を確認しましょう。
業者探し
まず解体工事を依頼する業者を探します。インターネットで検索したり、口コミから探したりといった方法でピックアップします。
このとき、候補に挙がった業者が解体工事に必要な資格や許可をきちんと保有しているかどうか、過去に違法な行いがなかったかどうかなども一緒に調べられるとなお良いですね。
現地調査と見積依頼
実際に現地調査を行ってからの方が、より正確な見積を出してもらえます。現地調査には業者だけで行ってもらうことも可能ですが、施主自らが出向いて業者の担当者と直接顔を合わせて話をすることも、見積においてはとても大事です。できるだけ時間の都合をつけて、現地に赴けるようにしたいですね。
契約と各種申請
見積の結果などから、最終的に依頼する業者を決めて、契約書を交わします。建設リサイクル法の届出を役所に、道路使用許可申請を警察署に提出しますが、これはどちらも解体業者が行ってくれるので問題ありません。
無事に契約が済んだら、新築工事を行うハウスメーカーとまず三者で打合せを行っておくと良いでしょう。解体工事のスケジュールや、三者それぞれの連絡先の交換などを行っておくと、今後の連携がうまくいきます。
ライフラインの撤去とご近所への挨拶
今ある建物を解体してしまうので、建造物の取り壊しの前にライフラインの撤去が必要です。電気・ガス・水道など各業者に連絡し、指示通りに必要な手続きを行いましょう。
それと並行して、近隣住民に挨拶回りを行います。
解体工事は騒音や振動、粉じんの発生など近隣に迷惑をかける要素が多くあります。あらかじめ業者と施主両方で、ご近所を回っておきましょう。
解体工事・仕上がり確認・支払い
工事中は特に施主がすることはありませんが、近隣と何かトラブルがあったようなときには、すぐに対応できるようにしておくと良いでしょう。
仕上がり確認にも、また新築工事を担当するハウスメーカーに立ち会ってもらいます。新築工事をするにあたって何か不都合な部分が残っていないかをきちんと確認してもらうためです。
減失登記
最後に減失登記(取り壊した建物の登録を登記簿謄本から消すこと)を行います。土地家屋調査士に依頼しても良いですが、多少手間がかかっても自分で行うと費用を抑えられます。
自分で解体業者に依頼することはそんなに大変ではない
ここまでの流れを見ると、分離発注によって解体工事業者を自分自身で探すことは、そこまで難しくも手間がかかることでもない…ということがおわかりでしょうか。
もちろん、わずかな手間もかけたくない、時間がもったいないという場合には、いくら費用が浮かせられるといってもおすすめはできませんが、思っていた以上に分離発注によるメリットを受けられる方は多そうですよね。
まとめ
建替え工事の際に「解体工事」と「新築工事」の両方をハウスメーカーなどにまとめて依頼するのが「一括発注」、解体工事の部分だけ自分で探した別業者に依頼するのが「分離発注」です。
分離発注には費用を抑えられるなどのメリットがありますが、その分一括発注よりも手間がかかることは否めません。自分の状況に合わせて最適なやり方を検討していくのが良いですね。